信託が有効な理由


『信託は特効薬!?』

 信託、とくに営利を目的とする商事信託ではなく、親族でつくる家族信託(民事信託)を利用することで、今までにない柔軟で円滑な相続対策が可能となります。しかし、あらゆる場合に効果を発揮するわけではありません。家族信託(民事信託)を利用しても、納税資金の対策や、遺留分への配慮は必要になります。信託は、万能薬ではなく特効薬といえます。

『なぜ効くの?』

 信託が特効薬となるのは、信託では所有権とは異なる受益権という形で関係を構築するからです。
 所有権は、その財産の使用・収益・処分ができる権利です。いわば、その財産を全面的に支配できる状態です。これに対し、受益権は、信託契約などの信託行為によって、信託財産の引渡や、信託財産からの収益を受ける権利であり、受託者が受益者に対して負う債務です。
 相続の場合、財産の所有権を相続します。これが、信託を利用すると、受益権を相続することになります。受益権は、委託者と受託者を契約当事者とする信託契約により、様々なアレンジが可能です。たとえば、①収益受益権と元本受益権とに分ける(受益権の複層化)、②受益する期間を制限する、③自分の死後の財産を指定する(受益者連続信託)、などは、いずれも所有権の状態ではできないことで、これら受益権の特徴をうまく利用することで、想いを確実に実現できる方法をデザインしていきます。

『大切な受託者の責任』

 また、信託の仕組みの中で、受託者の役割はとても大切です。受託者は、信託目的に従い、受託者の名義で財産を管理していきます。預かった不動産を売却し、新しい不動産を購入することも、信託目的に反しない限り可能です。大きな裁量があるため、悪い受託者であれば財産の着服がなされるおそれがあります。実際に、信託法が形作られる中で受託者の裏切りが多くあったことは事実であり、それを防止するための工夫が多くなされてきました。現在では、受託者には多くの責任が課され、罰則もあり、さらに専門家等を信託監督人をつけることも可能であり、受託者の暴走を防ぐ制度設計となっています。

『意外な倒産隔離機能』

 信託の持つ機能の中で、大きいのが倒産隔離機能です。信託財産は、Nobady's Propertyといわれ、『誰のものでもない財産』となるのです。
 元々、信託財産をもっていたのは委託者です。しかし、信託契約などの信託行為によって、信託財産としたことにより、委託者の財産ではなくなります。この場合、委託者の債権者は、信託財産に強制執行を行う事はできません。
 では、受託者の債権者はどうでしょうか。受託者は形式的な所有者であり、自分の財産とは分別して信託財産を管理しなければなりません。受託者の債権者も信託財産に強制執行を行う事はできません。
 では、受益者の債権者はどうでしょか。受益者の債権者は、受益権を差し押さえることはできますが、信託財産そのものを差し押さえることはできません。
 このような特徴から、一族で代々受け継いでいくような土地は、信託財産として適当といえます。ただし、運悪く破産しそうなときに、差押えを逃れるために信託を利用することは詐害信託として取消の対象になります。